住まいを買う契約の流れ
物件選びについて
1.マンションか一戸建てか
「自分の土地」にこだわりのある人、あるいは長年一戸建てで暮らしてきた人は、やはり持ち家の購入を考えるときには一戸建てが前提となる傾向があるようです。一戸建て志向の人は、主にマンションになりますが、集合住宅の場合は隣戸や上下住戸への気遣い、管理組合での活動などが煩わしいと感じることが多いようです。
反対にマンション志向の人は、一戸建ての人がデメリットに感じることをメリットとして捉えている場合が多く、例えば同じ建物内に暮らすことでコミュニティの形成が楽であること、管理組合を通じた管理会社による清掃やメンテナンスが日常的に行われるので居住者自身は手がかからないなどが挙げられます。
このような住まいおよび暮らし方の好みに購入予算を考え合わせて、まずは購入物件を決めることになります。ただ、それぞれにさまざまな物件が存在するので、先入観で考えを固定せずにまずは広くたくさんの物件情報を見てみることをおすすめします。例えば、一戸建てでは借地権(定期借地権含む)も選択肢となるので、思ったよりも低めの予算での購入がかなうかもしれません。また、1階の専用庭付きマンションならば、一戸建てのようにガーデニングなどを楽しむことができるでしょう。
いずれにしても、全て満足できる物件を見つけるのはなかなか難しいことですから、自分や家族にとって重要な事柄を考慮し、予算と価格が合致するところを探りながらライフスタイルに合った物件を選んでいくことが大切です。
2.新築か中古か
一般的には中古住宅よりも新築住宅を好む人が多いようです。誰も住んだことがない新しい家に住むというのはうれしいことですから、それはうなずけます。ただ、好みということであれば、購入した住宅をそれこそ自分の好きなように手を加えて思い切り個性を出したいという人には、中古住宅が向いていると言えます。
予算面で考えれば、基本的には新築の方が高いのはごく一般的な傾向なので、金額面でどちらにするかも重要な選択の分かれ目になるでしょう。ただし、新築住宅の購入には税制面での優遇措置が受けられるというメリットがあるので、そのことも考慮するといいでしょう。
また、新築住宅は完成前に購入を決めなければならない場合がありますが、中古住宅の場合は物件を見て確認した上で購入判断ができるという点で違いがあります。
3.物件情報の収集
希望通りの物件との巡り合いの機会は、多くの物件情報を収集すればその中から見つかる可能性は高くなるでしょう。ただし、単に量だけではもしかしたら時間を使うだけの結果になるかもしれません。そうならないためには、以下のような入手ルートに関する知識はかなり大切になります。
(1)インターネットを活用する
インターネットには、アットホームのような不動産に特化した物件情報のポータルサイトが存在します。日本全国、全物件種別の最新情報が掲載されているので、候補物件の検索のほか、希望地域の物件価格相場を知る上でもとても役立ちます。所在地から探す、沿線・駅から探す、通勤・通学時間から探すなど、その人に合った探し方ができるので、素早く候補物件の情報を集めるには最適といえます。
(2)不動産会社独自のWebサイトを利用する
例えば分譲開始時に人気が高まりそうなブランド物件の情報を集めるには、販売(代理)する不動産会社のWebサイトを閲覧するとともに、その不動産会社の「友の会」などに複数入会しておくといいでしょう。入会(会員登録)はほとんどの場合は無料なので、気軽に利用できます。登録時に希望条件を入力しておくと、マッチング機能により該当物件が出てきたときに自動で知らせてくれるサービスも選択により利用できます。
(3)新聞折込みチラシ等
住まいの近くの物件情報は新聞に折り込まれるチラシが役立ちます。また地域に特化したフリーペーパーなどの刊行物にも不動産情報が掲載されていることが多いので、気にして見てみるといいでしょう。
不動産会社への訪問、購入申込み~売買契約締結まで
1.不動産会社に問い合わせる
上記の手段で物件を探して候補物件を見つけたら、不動産会社に問い合わせをして内見の段取りを取り付けます。新築分譲住宅の場合は、オープンハウス(ルーム)として公開されている場合が多いので、開催日に内見に行かれるように手続きをします(フリーで公開している物件、予約が必要な物件があります)。中古住宅は売主が居住している場合があるので、事前に連絡の上内見日程を調整、確定していく必要があります。
2.取引態様について
また、物件情報を公開している不動産会社はそれぞれ取引上の立場が異なります。これを「取引態様」といいます。不動産の物件広告にはこの取引態様は必ず明記されていて、例えば「売主」、「販売代理」、「仲介(媒介)」などと書かれています。買主が物件を購入するという行為だけを考えれば、どの取引態様でも変わりがないように思えますが、仲介手数料の有無が異なるなどの違いがありますので、物件ごとに取引態様を確認しましょう。
基本的に中古住宅の購入では不動産会社の立場は仲介になります。一概にどの形態がいいとは言えませんので、取引態様を確認したらそれぞれの対応の違いも調べておきましょう。
3.購入の申込み
分譲住宅、分譲マンション等の広告には、「購入お申し込みの際には申込証拠金○○円と印鑑をご用意ください」などと表記されていることがあります。これはその物件を気に入って購入を申し込む際には、申込書に必要事項を記入して提出することのほかに、指定の「申込証拠金」を預ける必要があることをあらかじめ伝えているわけです。
申込証拠金の意味合いとしては、一般的には購入者の申込みが真剣であることを証明するということが挙げられます。これらがそろって初めて「この住宅を買いたい」という意思表示が行えることになるので、必要なものは忘れないようにしないといけません。預けた申込証拠金は、購入が確定した際には後日支払う何らかの費用に充当されることがほとんどです。
また、収入が証明できる書類(源泉徴収票や納税証明書等)が必要な場合も多いので、何が必要なのかが不明な場合は事前に不動産会社に確認しましょう。
4.重要事項の説明
不動産取引には確認すべき項目、複数の法令による規制などが含まれるため、宅地建物取引業法(以下宅建業法)では不動産会社には一般消費者である物件購入者に対して、売買契約の締結に先立って「重要事項説明」義務を課しています。
重要事項説明は不動産の専門家と言える「宅地建物取引士」が、購入希望者に対し「宅地建物取引士証」を提示し自分が有資格者であることを証明した上で、「重要事項説明書」によって販売物件の内容や取引条件などを説明しなければなりません。
前述のように、重要事項説明は契約締結前に行われるものですから、不明な点があればそのときに確認することができます。言い方を変えれば、不明点を確認しないまま重要事項説明を終えて売買契約を締結した後では、そういう意味だとは思わなかったとか、聞き漏らしていたとか言っても内容を改訂することはできませんし、契約を取りやめることもできません。ですから、細大漏らさず説明を聞いて、全て納得した上で重要事項説明を終えることがとても大切なのです。
5.売買契約
重要事項説明を受けて全て納得した上で完了したなら、売買契約の手続きに入ります。契約は口頭でも有効ですが、宅建業法では取引の安全と買主保護の観点から、不動産会社が自ら当事者として売買契約を締結するときには、買主に一定の事項を記載した書面(売買契約書)を交付するように義務付けています。
仲介の場合も同様に取り扱われます。契約書に記載される事項は、購入する物件や取引の条件によって多少の違いがありますが、基本的な事項は次のとおりです。
・売買物件の表示
・金銭に関すること(売買代金・手付金等の額・支払日)
・土地の実測及び土地代金の精算
・境界の明示
・所有権の移転と引き渡し
・付帯設備等の引き継ぎ等
・負担の消除
・公租公課等の精算
・手付解除
・危険負担(引き渡し前の物件の滅失・毀損)
・契約違反による解除
・反社会的勢力の排除
・特約
・契約不適合責任
売買代金の支払いと登記手続き
1.売買代金の支払いの流れ
物件の購入意思を固め、その申込みから物件の引渡しを受けるまでにはさまざまな費用名目で金銭を支払うことになります。主な費用を内容とともに記しておきます。
(1)申込証拠金
主にその物件を購入したいという意思表示の証拠として支払います。一般的には5万円~10万円程度を不動産会社に預けることが多いようです。
(2)手付金
手付金は売買契約を締結する際に、契約当事者の一方から相手方に対して交付される金銭その他の有価物をいいます。手付金は契約が約定どおり履行されるときは、売買代金の一部に充当されます。
(3)内金(中間金)
内金は売買代金の一部弁済金をいい、前払いの性格を持っています。売買代金の全額を一時に支払わず、2回以上に分けて支払う場合の最終残代金以外のもので、内入金とも呼ばれています。買主が売買代金の一部である内金を売主に支払ったときには、買主は契約の履行に着手したことになり、売主は手付金を倍返しして契約解除ができなくなります。
(4)残代金…本物件の引渡し時または融資実行時
物件の引渡し時(融資実行時)には残代金の精算という形で、支払い手続きが行われます。売買代金の残金や諸費用を支払うと、物件の登記を行うという流れになっています。残金は売買代金から既に支払っている申込証拠金、手付金、内金を引いた金額になります。残代金が融資額より多い場合は、その不足分を現金等で準備しなければなりません。また、物件の引渡しから住宅ローンの実行までに期間が空く場合は、一時的に金融機関からつなぎ融資を受けることが必要になります。
2.登記手続きの進め方
不動産会社から住宅を購入する場合には、物件の登記手続きはその会社が手配してくれるはずですが、登記手続きを自分以外の誰かに代理申請してもらうときは、その業務は司法書士しかできないことが法令で定められています(一部は土地家屋調査士も可)。したがって、知識があれば当事者自身で行うことで、代理申請にかかる費用を削減することができます。ただ、やはり専門知識が必要になりますから、無理して自分でやることはおすすめしません。
不動産登記がなぜ必要かといえば、登記は第三者にその不動産が自分のものだと主張できる対抗要件になっているからです。
例えば、Aさんがある不動産を購入したとします。ところが売主が同じ物件をBさんにも売っていたとしたらどうなるでしょうか。当然AさんはBさんとその物件の所有権の移転を巡って争うことになります。しかし、Aさんが購入時に不動産の所有権移転登記を済ませていれば、物権変動を第三者であるBさんに認めさせることができるのです。実は不動産の登記は法令上の義務にはなっていないので、うっかり忘れるということも起こり得るのです。自分の財産を守るために、登記は必ず行いましょう。
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